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顔料

Pigment
更新日
2024年03月11日

絵具の発色成分。水や有機溶剤、樹脂、油などに溶けない有彩色(着色力のある白や黒を含む)の粉末のこと。着色に用いる色料のひとつで、水や油に溶けるものは染料と呼ばれる。油絵や日本画の場合は展色剤や膠(にかわ)などの媒剤とともに練り合わせて使い、フレスコ画の場合だと媒剤を加えず漆喰壁の化学反応によって、支持体へ固着させていく。顔料の種類には、鉱物や土などの天然鉱物によるもの、チタン白のような金属などを化学反応させて得られたものなどがあり、近年では炭素と水素との結合を基本にした有機顔料も種類が増えている。レンブラントはオーカー、アンバー、シエナといった廉価で安定した性質の土性顔料を、火にあぶって使ったという。その製造方法も、原料を粉砕してつくられるもの、加熱によって分解・反応させ合成するもの、固体・液体・気体など反応させるものなど、多岐にわたっている。顔料には、もともと色みを持つ有色顔料と、それ自体は着色力を持たないものの、他の顔料の増量や艶消しなどに用いられる体質顔料がある。光の三原色(赤・緑・青)は重ねると白くなるが、顔料(色)の三原色(シアン・マゼンタ・イエロー)を全部混ぜると黒になる。画家ターナーは戸外の光を捉えるにあたって、光を吸収/反射し、反射した波長のみを色みとして表わす顔料の特性を意識して描き、その後の画家たちにも影響を与えた。

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補足情報

参考文献

『絵具の科学』新装普及版,ホルベイン工業技術部編,中央公論出版社,1994
『絵画 素材・技法』,武蔵野美術大学油絵学科研究室編,武蔵野美術大学出版局,2002
『色彩の芸術 色彩の主観的経験と客観的原理』,ヨハネス・イッテン(大智浩、手塚又四郎訳),美術出版社,1964
『ビジュアル美術館 第8巻 色の技法』,アリスン・コール(村上博哉訳),同朋舎出版,1994
『絵画技術体系』,マックス・デルナー(佐藤一郎訳),美術出版社,1980