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教育普及

museum education
更新日
2024年03月11日

日本の博物館、美術館における、収集・保存・研究・展示以外の対外的な、教育を目的とした活動の総称(ただし教育普及を前面に打ち出した展示が行なわれる機会も少なくない)。呼称の出自は定かでなく、館の規模や運営方針、担当部門の有無などによって内容は多様で、定義がはっきりしないまま教育関連活動を指す言葉としてゆるやかに使用されている。ワークショップ、講演会やコンサートなど来館者サービスとしてのイヴェント企画、学校との連携事業、展示案内、鑑賞体験をサポートする印刷物の作成、さらにボランティアや「友の会」の担当、広報までを含む場合もある。教育普及活動がまず積極視され始めたのは1970年代のことで、地方に相次いで開館した公立の大規模館は、社会教育の充実に関心が集まる風潮を背景に「開かれた美術館」を体現すべく図書室、喫茶室のみならずアトリエ(造形室)、講座室など市民参加を促すスペースを建築に組み込んだ。教育普及担当学芸員を設けて79年にオープンした板橋区立美術館、独立した普及部に専門学芸員を設置した81年開館の宮城県立美術館などを先駆として80年代に実践が広がり、90年代に入ると西洋におけるミュージアム・エデュケーションの方法論の紹介・導入に伴って美術館相互の議論が活発化、社会的にも教育普及活動の重要性が広く認知され始めた。公的機関への経営理念の適用やNPO、ボランティアなど市民参加の増大が進む2000年代以降、人と人との関わりを主軸とする教育普及の観点の導入は館の運営全体に及びつつある。

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補足情報

参考文献

『全国美術館会議 教育普及ワーキンググループ活動報告1 美術館の教育普及・実践理念とその現状』,全国美術館会議,1997
『目黒区美術館ワークショップ20年の記録1987-2007』,目黒区美術館,2008
『公立美術館の教育普及活動:美術館連絡協議会創立10周年記念』,美術館教育普及国際シンポジウム実行委員会,1993
『国立西洋美術館 教育活動の記録 1959-2012』,国立西洋美術館,2015