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狭小住宅

Narrow House
更新日
2024年03月11日

およそ15坪(約50平方メートル)以下の敷地に建てられる住宅を「狭小住宅」と呼ぶが、その定義は曖昧である。1990年代後半以降に、建築雑誌だけではなく、一般誌やTVなどで建築の特集が組まれる機会が増え、「狭小住宅」という言葉が定着した。狭小住宅は歴史的にもたびたび建築業界で議論のテーマに取り上げられており、29年に開催された第5回CIAMのテーマが最小限住宅であった。日本では、戦後の資材不足の影響で政府により建築物の床面積に対する規制がかけられ、47年に12坪、48年の規制緩和で、5人家族の専用住宅で15坪以上の住宅の建設が禁止されたため、建築家の狭小住宅への関心が一気に高まった。結果、池辺陽の《立体最小限住宅》(1950)や、東孝光の《塔の家》(1966)など数々の名作狭小住宅が生まれた。なかでも52年に完成した増沢洵の自邸である《最小限住宅》(1952)は、その後、99年に西新宿のリビングデザインセンターOZONEで開催された「柱展」で、軸組が再現された後に、展覧会企画者が軸組を引き取り、自邸《スミレアオイハウス》(1999)としたことが話題となった。2002年には、1階9坪、2階6坪、延床15坪の《最小限住宅》をベースに、現代の建築家やデザイナーがリメイク・デザインするというコンセプトで「9坪ハウス」プロジェクトが事業化され、数々のメディアに取り上げられるなど、現在の狭小住宅の起源を増沢の《最小限住宅》と考えることができる。一方で、東京工業大学塚本由晴研究室によってまとめられた『ペット・アーキテクチャー・ガイドブック』(2001)により、日本特有の特殊な敷地条件に建つ建築物が紹介され、世界的にも日本の狭小住宅が注目を浴びるきっかけとなった。

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参考文献

『9坪ハウス 小さな家で大きな暮らし』,萩原百合、9坪ハウスオーナーズ倶楽部,河出書房新社,2006
『住まいの探究 増沢洵:1952-1989』,平良敬一編,建築資料研究社,1992
『9坪の家』,萩原修,廣済堂出版,2000
『ペット・アーキテクチャー・ガイドブック』,東京工業大学建築学科塚本研究室、アトリエ・ワン,ワールドフォトプレス,2001