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空想美術館

Le Musée Imaginaire(仏)
更新日
2024年03月11日

フランスの作家であり、ド・ゴール政権下で文化担当国務大臣を務めた政治家でもあったアンドレ・マルローが、1947年に出版した芸術論『東西美術論(原題:芸術の心理)』の第1巻で提示した概念のこと。「空想美術館」とは、あらゆる芸術作品の図版を並べることで、空想上の美術館であるように見立てたことに由来する。印刷や写真などの複製技術の発達により世界中の芸術作品を図版によって鑑賞することが可能となった。それによって、作品を比較できるようになり、美術史上の新発見がより頻繁になされる。そして、作品を巡る学術上の記述が変化し、評価基準が変わる可能性を帯びることとなる。空想美術館という発想は、ある作品とその着想及び制作過程においてインスピレーションを与えた作品とを比較し、視覚的にそれらの相互関係を把握する必要性をマルローが感じたことによるとされている。空想美術館は、現実の美術館の代用ではなく、美術館において実現不可能な芸術作品の配列を、複製物を通して可能にし、それによって生まれる知的作業を通して、芸術作品の新たな解釈を促すものなのである。

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補足情報

参考文献

『東西美術論1 空想の美術館 』,アンドレ・マルロオ(小松清訳),新潮社,1952