『口紅から機関車まで──インダストリアル・デザイナーの個人的記録』レーモンド・ローウィ
- Never Leave Well Enough Alone, Raymond Loewy
- 更新日
- 2024年03月11日
デザインの魔術師といわれたアメリカのインダストリアル・デザイナー、レーモンド・ローウィの著書。デザイン論の古典。ローウィは「製品をもっと美しくしなければならず、また美しくすることによってコストも低下できる」と主張する。原著は1951年にアメリカの出版大手Simon & Schuster社により出版。日本では藤山愛一郎によって学風書院(1953)と鹿島出版会(1981)から訳書が刊行されている。パリに生まれたローウィは、第一次世界大戦後にニューヨークへ渡り、『ヴォーグ』誌や『ハーパーズ・バザー』誌のデザインを手がけた後、29年にローウィ・インダストリアル・デザイン事務所を設立する。以後の活躍は目覚ましくコカコーラのボトルや煙草ピースのパッケージ、アポロ11号乗務員の宇宙服から機関車に至るまで、幅広い領域のデザインに携わった。本書の内容は主にローウィが活躍していた30年代のデザイン界の状況を振り返るもので、彼自身が序文において「この本は、生計を立てるためアメリカにやって来て、偶然にもひとつの職業分野を創始し、その分野で生活を築き上げた、ひとりの青年の物語である」と述べているように、当時の消費生活や職業としてのインダストリアル・デザイナーの役割を知ることができる。
補足情報
参考文献
『レイモンド・ローウィ-消費者文化のためのデザイン』,グレン・ポーター(海野弘訳),美術出版社,2004