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クボ=フトゥリズム

Cubo-Futurism(英), Кубофутуризм(露)
更新日
2024年03月11日

クボ=フトゥリズム(立体未来主義)とは、ロシア・アヴァンギャルドに含まれる潮流のひとつで、1910年代、主に美術と詩の分野で開花した芸術運動。D・ブルリューク、B・マヤコフスキーらが参加する詩人のグループ・ギレヤ派の活動がロシアにおける未来派の嚆矢となり、12年に文集『社会の趣味への平手打ち』で既成の文法の破壊を主張していた頃、絵画においてこの動きに相当したのがクボ=フトゥリズムだった。代表格のM・ラリオーノフ、N・ゴンチャローヴァといった画家たちは、未来派よりもキュビスムの絵画様式に負いつつ、自国の伝統や民衆文化(ルボークと呼ばれる民衆木版画、農民の肖像画、子どもの絵、イコン画など)を重視した作品を手掛けた。また、ネオ・プリミティヴィズムを基盤に円筒形や幾何学的形態による絵画空間の総合を目指し、西欧のモダニズムとは異なる表現を提示した。12年3月、グループ展「ロバの尻尾」にK・マレーヴィチ、ラリオーノフ、ゴンチャローヴァ、タトリンらが参加。マレーヴィチはここで最初の農夫シリーズを展示する。翌年の「標的」展ではラリオーノフがロシア初の無対象絵画を志向する「光線主義(ルチズム、レイヨニスム)」を発表した。さらに同年、サンクトペテルブルクで上演された未来派オペラ《太陽の制服》の背景幕に、その後のシュプレマティスムを予感させるマレーヴィチの「黒い正方形」が現われるなど、ロシアの前衛美術は次第にネオ・プリミティヴィズムから抽象への移行を示す。15年12月、サンクトペテルブルクで開催された「最後の未来派絵画展 0-10」では、シュプレマティスムとタトリンの構成主義が台頭し、クボ=フトゥリズムの終焉を象徴するひとつの区切りとなった。

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参考文献

「モスクワ市近代美術館所蔵 青春のロシア・アヴァンギャルド」展カタログ,アートインプレッション,2008
『ロシア・アヴァンギャルド小百科』,タチヤナ・ヴィクトロヴナ・コトヴィチ(桑野隆監訳),水声社,2008
『未来派 イタリア・ロシア・日本』,井関正昭,形文社,2003
『ロシア・アヴァンギャルドと20世紀の美的革命』,ヴィーリ・ミリマノフ(桑野隆訳),未來社,2001
『ロシア・アヴァンギャルド 1910-1930』(アール・ヴィヴァン選書),ステファニー・バロン,モーリス・タックマン編(五十殿利治訳),リブロポート,1982