写真家・野町和嘉は、1972年、25歳の時にサハラ砂漠を訪れ、大きな転機を迎えました。辺境に関する情報が乏しい時代、出会った旅人と地図を分け合うような行程のなかで、野町は蒼穹の下に開けた地平線と、古来より連綿と続く人々の営みに魅せられていきます。サハラの写真が認められ各国のグラフ誌に掲載されるようになり、野町はさらにエチオピア、チベット、サウジアラビアと、深い信仰が人々の暮らしを形作っている、しかし外部の者が容易には近づくことのできない土地を目指しました。旅を続ける野町の写真には、過酷な風土のなかで暮らす人々の息遣いと生き抜く意志が宿っています。そして、その膨大な作品群は、デジタル・テクノロジーにより「アイロン掛けされた一枚のシーツで覆ったように急速度で画一化されつつある」現在では最早見ることのできない、貴重な人と大地のドキュメントといえるでしょう。
本展覧会では、「サハラ」、「ナイル」、「エチオピア」、「グレート・リフト・ヴァレー」、「チベット」、「メッカとメディナ」、「アンデス」の7つのテーマで代表作品をご紹介し、野町和嘉の50年にわたる活動の足跡を辿ります。[美術館サイトより]