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元禄模様

Genroku Pattern
更新日
2024年03月11日

日露戦争後の戦勝景気に沸いていた明治38(1905)年を中心に流行した着物の模様。市松・疋田・槌車・葵・蝶・花鳥・波などが大きく派手に表現されているのが特徴で、「元禄模様」の命名は、この模様の流行を仕掛けた三越呉服店による。当時、三越の役員を務めた高橋義雄は、欧米諸国の視察を経て、パリ・モードのように広範な影響力をもって人々を消費へと駆り立てる流行の創出を企図するようになり、好景気時には派手なものが好まれるとの考えから、元禄時代の華やかな意匠に注目した。こうして考案された元禄模様は、「元禄花見踊り」や「元禄舞」といったキャンペーンを通じてひとつのブームを形成するに至り、「元禄」と銘打ったネクタイや料理までが登場を見た。過去の一時代の美術や工芸の意匠に注目し、それを下敷きとする新たな着物の模様を考案することは、元禄模様に限らず、三越を含む百貨店の前身となる呉服店によって繰り返し試みられているが、それらが単なる復古趣味にとどまることなく、流行創出の意志に導かれたものであったことは重要である。

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参考文献

『服飾美学』27号,「近代の服飾と復古趣味 『元祿』の流行をめぐって」,根本由香,服飾美学会,1998
『趣味の誕生 百貨店がつくったテイスト』,神野由紀,勁草書房,1994