広告写真
- Commercial Photography
- 更新日
- 2024年03月11日
商品やサービスの存在と、その魅力を伝える広告宣伝のために用いられる写真。看板、ポスター、チラシ、新聞、雑誌などの媒体や、インターネット上に掲載される。日本では1890年代以降から、新聞や雑誌の広告に写真が使われるようになった。初期は芸妓や女優などをモデルにした写真が多かったが、1930年代に入ると、中山岩太や小石清らによる新興写真的なアプローチや、木村伊兵衛によるスナップ写真を用いた広告が登場する。26年には金丸重嶺と鈴木八郎による金鈴社が日本初の広告写真スタジオとして開設され、33年には名取洋之助が日本工房を創設するなど、広告写真をめぐる状況は刻々と進展したが、やがて戦時下体制におけるプロパガンダ戦略に利用されることとなった。戦後になると、51年にライトパブリシティ、59年に日本デザインセンターが設立され、写真家がアート・ディレクターやコピーライターとチームを組んで仕事をする体制が生みだされる。58年には日本広告写真家協会が設立され、60年には専門誌『コマーシャル・フォト』も創刊されるなど、高度経済成長とともに広告写真界は活況を呈し、早崎治、篠山紀信、横須賀功光など、数多くの写真家が活躍した。70年代以降は、オイルショックやコンシューマリズムの影響を受け、メッセージ性を前面に押し出した表現へとシフトする傾向が生まれた。その後もバブル経済の崩壊やデジタル技術の導入、インターネット広告の増加など、広告界は多様な変化を迎えており、そうした時代背景の変遷や、それにともなう大衆の欲望の変化が、広告写真表現の変容を生みだす要因となっている。