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『これからのすまい 住様式の話』西山夘三

Korekarano Sumai, Uzo Nishiyama
更新日
2024年03月11日

1947年、建築家・建築学者の西山夘三によって書かれた書物で、新しい住まい様式が、歴史的な考察に基づいて提案されている。48年に毎日出版文化賞を受賞、2011年に西山の生誕百周年を記念し復刻された。
戦前の低い生活水準を高め、日本全土の住まい様式を統一するといった目標が掲げられ、新しい住宅様式の提案がなされている。全体で8章からなり、「起居様式」や住まいの「機能分化」、「住宅の定型化」などについて書かれている。第2章「床面座と椅子座」においては、椅子座の生活が多くの住宅にとり入れられていることを指摘し、さまざまなとり入れ方がある中で、畳の上に椅子を置き寝るときは布団を敷くという和洋混合したかたちが最も現実的であると示した。この様式は、戦後の住宅の多くで見られることとなった。第3章「家生活と私生活」では「食寝分離」の次の段階として「就寝分離」を取り上げ、夫婦と子供で、さらに子供の性別で寝る部屋を分けるといった、私生活の確立が最優先されるべきであると述べている。最終章の「住宅の型・生活の型」では、住宅を定型化し、家具を規格化することで合理的な住宅供給ができるとし、そのために建築家は優れた「住宅の型」を作り出さなくてはならないと説いた。本書は戦後復興期に、理想とする質の高い住まい方がどうあるべきかを示し、それを実現するための住まい様式を提案することで、生活の近代化を推し進めたと言える。

補足情報

参考文献

『これからのすまい 住様式の話』,西山夘三,相模書房,2011
『西山夘三の住宅・都市論 その現代的検証』,住田昌二,日本経済評論社,2007