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コレクティブ・アクト

collective acts
更新日
2024年03月11日

美術家・映像作家の田中功起が不特定多数の参加者を集めて行なう「集団行為」のアートプロジェクト。コレクティブ・アクトはシリーズとして展開され、田中が設定したゆるやかな条件に基づいて、参加者が特殊な状況を一緒に経験することになる。「不安定なタスク」では、「懐中電灯を振りながら夜の街を歩く」、「非常食を食べながら名前について話す」、「夢を共有し一つの物語を作る」などが行われた。それ以外のコレクティブ・アクトとしては、絵を持って街を歩いた《Painting to the public (Open air)》などがある。コレクティブ・アクトは展示される際、映像ではなく写真とテキストによって紹介されるため、観客はその場の雰囲気を写真から想像するしかない。しかし、コレクティブ・アクトは、東日本大震災時に田中がロサンゼルスにいたことがきっかけとなり開始され、「経験の共有」が重要なテーマとなっている。それはただ単に参加者が同じ経験をするということではなく、日常的な行為を読み替えることで、特殊な出来事の経験を共有する、分有するということが目論まれている。例えば、「16.7メートル以上のビルに上がる」というコレクティブ・アクトでは、参加者は最後まで知らされないまま津波の高さまでビルを上がることで、東日本大震災の経験を、人知れず共有することになる。2013年に開催されたヴェネツィア・ビエンナーレで、日本代表に選出された田中は、一連のプロジェクトを展示した「不確かなものの共有とコレクティブ・アクト」で特別表彰を受賞した。

著者

補足情報

参考文献

『質問する その1 2009-2013』,田中功起,アートイット,2013
『美術手帖』2013年8月号,「REPORT INTERVIEW 田中功起」,木村絵理子,美術出版社,2013
abstract speaking sharing uncertainty and collective acts,Koki Tanaka,The Japan Foundation+NERO,2013