コンセプチュアル・アート(映像)
- Conceptual Art
- 更新日
- 2024年03月11日
1960年代末より、主に現代美術のアーティストたちによって追求された、コンセプチュアル・アートのコンテクストに則したヴィデオ・アート作品。全体的な傾向として映像内容よりは、むしろ映像の経験がもたらす観客との関係にテーマを置いた作品が多い。内容としては身体的な問題をテーマとするものや、映像そのものの構造的な問題を扱うもの、そして政治的な権力関係についてのものなどがある。初期の代表的なアーティストには、アメリカではブルース・ナウマンやヴィト・アコンチ、ピーター・キャンパスなど、ヨーロッパではフルクサスの流れをくむヴォルフ・フォステル、また日本人では飯村隆彦やオノ・ヨーコ(特に70年代の作品)らがいる。また、フェミニズム的なコンセプトを展開したアーティストには、アメリカのジョーン・ジョナスやマーサ・ロスラー、オーストリアのヴァリー・エクスポート、日本の出光真子らが挙げられるだろう。また80年代には日本(SCAN系列の作家たちなど)を含め世界的に、ヴィデオの実験性とコンセプチュアル・アート性を結びつけることが、ヴィデオ・アートのひとつのスタイルとして流行した。その後2000年代になって、ヴィデオにおけるコンセプチュアル・アート的なアプローチは、作品が短く、テーマが単純で理解しやすいという、ニューヨークを中心とした商業ギャラリーによって支配されるアメリカ現代美術的なスタイルへと収束してしまう。ヴィデオの現代美術的スタイルは世界的な流行を見ることになり、09年の国立近代美術館「ヴィデオを待ちながら」展は、そのようなスタイルの作品を総括したものだったといえるだろう。
補足情報
参考文献
New Artists’ Video: A Critical Anthology,Gregory Battcock,Plume,1978
「Japan ビデオ・テレビジョン・フェスティバル」カタログ,ビデオギャラリーSCAN,1987、1989、1992
『映像編集の理論と実践』,金井明人、丹羽美之編,法政大学出版局,2008
「ヴィデオを待ちながら 映像、60年代から今日へ」展カタログ,東京国立近代美術館,2009