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コーナー・レリーフ/カウンター・レリーフ

Corner Relief/Counter Relief
更新日
2024年03月11日

ロシア・アヴァンギャルドの作家ウラジーミル・タトリンによるレリーフの名称。1914年パリのピカソのスタジオを訪れたタトリンは、そこでキュビスムの初期コラージュを実見した。モスクワに帰国した後に、15年に開始されるマレーヴィチの非対象絵画に先んじて、14年に非対象レリーフの制作を開始。この絵画的彫刻においては、レリーフはワイヤーやロープなど、レリーフの側面から背面を貫く旋回的な構成要素によって壁面に固定される。その結果、レリーフ自体が壁面からわずかに浮き上がり、中空に留まるような浮遊感が与えられる。また、構成主義の原理によって素材同士が空隙を保ちながら分散的に配置されるため、作品には外側の現実空間を取り込むような開放性が与えられることになった。タトリンは作品を壁面からさらに遠ざけるように壁面のコーナーの区画にレリーフを設置することを試み、それらはコーナー・レリーフとも呼ばれた。一連のレリーフでは、主に木、鉄、石膏、ガラス、ブリキなどの素材が着色されないまま使用され、その素材感を強調する。タトリンが制作したレリーフの多くは現存せず、記録写真や後の再制作によってその実態をうかがい知ることができる。

著者

補足情報

参考文献

Tatlin: new art for a new world,edited by the Museum Tinguely,Basel with contributions by Simon Baier(et al.),Hatje Cantz,2012

注・備考

※タトリンのレリーフに関しては、ほかにレリーフ・コンストラクション、絵画的レリーフ、コーナー・カウンター・レリーフなどの名称もある。また、タトリンがピカソを訪れた年は1913年と言われてきたが現在は14年に修正されている。