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シェル構造

Shell Structure
更新日
2024年03月11日

シェル構造は、薄い曲面状の板を外郭として用いる構造である。曲面板構造とも呼ばれ、外力を面内に適切に流すことで、軽くて強度の高い構造物を作ることができる。また、HPシェル(双曲放物面シェル)や双曲回転シェル、円筒シェル、その組み合わせによって、さまざまな形体を作ることが可能であり、シェルの形状が建築物の印象に与える影響は非常に大きい。シェル構造の代表的な建築としては、8枚のRC造のHPシェルを寄り添うように立て掛け、頂部の隙間が十字架状のトップライトとして機能する丹下健三による《東京カテドラル聖マリア大聖堂》(1964)や、RCのシェルが鳥が羽を広げたように見えるエーロ・サーリネンによる《JFK空港ターミナル5》(1962)などが挙げられる。なかでも、ヨットの帆を思わせるシェルの屋根が特徴的な、ヨーン・ウツソンによる《シドニー・オペラハウス》(1973)は、世界遺産にも指定されており、シェル構造の最も有名な建築のひとつと言える。一般的に、シェル構造の構造解析は非常に困難であり、《シドニー・オペラハウス》で構造設計を担当したアラップ社の果たした功績は大きい。また建築物以外でも、プラスチック製の椅子などにシェル構造が採用される例も多く、イームズ夫妻による《シェル・チェア》は特に有名である。

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参考文献

『現代建築の構造と表現』,クルト・シーゲル(川口衛、花井正実、片岡正喜訳),彰国社,1967