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色調

Color Tone
更新日
2024年03月11日

色の明暗、濃淡といった色の度合いや違いを表わす。もともと音楽用語にある「調子」や「音調」から転じて、美術用語として絵画における「色の調子」を意味する言葉として用いられるようになった言葉。英語のまま「トーン」とも呼ばれている。同じ色相でも、明度や彩度の違いによって、明るい-暗い、淡い-濃いといった色の調子を指し、「純色調」「明色調」「灰色調」「暗色調」といったように使われる。音を組み合わせた和音のように、色を組み合わせて色調を整えることは、特定の色をつかって画面に統一感をつくる、ということでもある。ゲーテは、美術(色調)と音楽(音調)のあいだに「力強い色調=長調」、「優しい色調=短調」というアナロジーを見出した。「音楽から借用して、『音調』や『調性』という言葉を、彩色においても『色調』という言葉にして用いることが出来るなら、よりよい美術作品を生み出すことが出来る」と、ゲーテは著書『色彩論』に記している。色調をうまく利用した描画方法として、空気遠近法が挙げられるだろう。空気遠近法とは、遠く(奥)にあるものほど色調をぼやかすことで、空間の奥行きを表現する方法である。また「移調」と呼ばれる、画面の色相の組合せは変えずに、トーンのみを変換させる配色も、イメージの変化をつけるテクニックとして使われている。

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参考文献

『色彩論:完訳版 第1巻(教示篇・論争篇)』,ヨーハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ,工作舎,1999
『アートテクニック大百科 素描・遠近法・水彩・パステル・油絵・アクリル・ミクストメディア』,レイ・スミスほか(夏川道子ほか訳),美術出版社,1996
『色彩科学事典』,日本色彩学会,朝倉書店,1991
『色彩学概説』,千々岩英彰,東京大学出版会,2001
『カラーデザイン公式ガイド 技巧編』,小嶋真知子(ヒューマンアカデミー監修),美術出版社,2009