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自然主義

Naturalism
更新日
2024年03月11日

美術において広義には、自然物をあるがままに忠実に再現しようとする芸術形式を意味する。自然主義的な美術とは、古代ギリシャ・ローマ美術やイタリア・ルネサンス美術などのような自然の忠実な再現を試みた美術を指す。この場合に求められる美とは、芸術作品そのものとしての美ではなく、芸術作品に投影された自然物のもつ美である。つまり自然美を映す役割としての自然主義的芸術作品は、「自然の理想化」と相反するものではない。よって、自然に価値の原理があるとする点においては写実主義(リアリズム)と同意であるが、「対象物の理想化を許容せず、美醜にかかわらず自然を写す」という意味での写実主義とは矛盾している。本来、「自然主義」という概念は自然科学の実験的方法を芸術分野に適用し、現実社会のあらゆる側面を徹底的に観察して制作に反映させるという美学理論で、19世紀の実証主義から生まれフランスの小説家、エミール・ゾラの文学理論において完成したとされている。この理論の見解に沿った美術作品、例えば19世紀フランスの画家、ギュスターヴ・クールベによる絵画などは、写実主義と呼ばれる。自然主義という言葉を、特定の美術流派と結びつけて初めて用いたのは、17世紀イタリアの古代研究家で伝記作家のジョヴァンニ・ピエトロ・ベッローリが1672年に発表した『近代画家、彫刻家、建築家伝』においてであった。彼は、ホセ・デ・リベーラ、ヘラルト・ファン・ホントホルスト、ル・ヴァランタン(ヴァランタン・ド・ブーローニュ)らカラヴァッジョの追随者たちの作風に対して使用した。ここでは、彼らの美醜を問わず自然に忠実に再現することを指し、写実主義の持つ意味を含意している。

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