写真油絵
- Photographic oil-paintings
- 更新日
- 2024年03月11日
写真油絵とは、写真の上から彩色するのではなく、印画紙の表面の被膜を剥がし、その裏から油絵の具によって彩色された写真を指す。写真油絵の創始は、横山松三郎(1838-1884)とされる。横山は択捉島に生まれ、函館にきたロシア人・初代領事ゴスケヴィッチから写真術と西洋画法を学んだ。その後江戸に渡り、下岡蓮杖に師事。1868年に写真館「通天楼」を開業。日光山や江戸城の撮影、壬申検査の記録など、明治政府に依頼され数々の仕事に従事した。後年、陸軍士官学校の教官になり、新たな写真技術の開発にあたった。写真油絵は、高橋由一が提唱した写真の欠点を克服すべく、また五姓田工房による写真画(横浜絵)とも異なる、写真を絵画に拮抗させるための技法と言える。早すぎる晩年まで、写真術の進歩と応用に没頭し、写真の可能性を追求し続けた松三郎であるからこそ、写真であることにこだわる写真油絵の技法を生み出すに至ったのだろう。写真油絵の技術は、弟子の小豆澤亮一が受け継ぎ、松三郎亡き後も制作を続けたようだが、その後継承者が途絶え、失われた技法となった。
補足情報
参考文献
『岩波近代日本の美術4 写真画論──写真と絵画の結婚』,木下直之,岩波書店,1996
『写真渡来のころ』,東京都写真美術館,1997
『140年前の江戸城を撮った男──横山松三郎』,江戸東京博物館,2011
『通天楼日記 横山松三郎と明治初期の写真・洋画・印刷』,冨坂賢、柏木智雄、岡塚章子編著,思文閣出版,2014