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新政府

New Government
更新日
2024年03月11日

原発事故後の政府の対応に疑問を抱いた坂口恭平が、2011年5月10日に自ら新政府初代内閣総理大臣を名乗り設立した独自の政府。内乱罪に問われる恐れもあったことから、新政府活動は芸術と称して展開された。坂口は新政府の国民(twitterのフォロワー)をすべて何らかの大臣と考え、中沢新一を文部大臣に任命するなど、知人を次々に大臣に任命した。新政府が担当する行政は「生存権の死守」であり、新政府の首相官邸として熊本県内坪井町に借りた築80年の一戸建てを「ゼロセンター」と名付け、東日本全域から逃れてくる人の避難所とした。避難計画に続いて、福島の子供を無料で熊本に3週間招待する「0円サマーキャンプ計画」を実施している。新政府の政策の柱として坂口は「自殺者をゼロにするために全力を尽くす」ことを掲げ、自らの電話番号を公開して新政府いのちの電話(その後、「草餅の電話」に名称変更)を行った。この他新政府の政策として、お金がなくても生き延びることができる生活圏をつくるべく、誰のものでもない土地、所有者不明の土地を協力して使うための土地として投稿するウェブサイト「Zero Public」を立ち上げている。新政府の活動は「社会」を変える活動ではなく、あくまでも「考え方」を変える試みであり、海外では演劇やパフォーマンスとして受け取られたが、国内では社会活動として誤解されることもあった。2012年11月から翌年2月にかけてワタリウム美術館で坂口の活動を紹介する展覧会「坂口恭平 新政府展」が開催され、坂口は美術館近くの一軒家を青山ゼロセンターと称して、パフォーマンスやコンサートなどを開催する実験的な空間として運営した。2013年4月15日、坂口はtwitter上に、新政府草餅の電話を終了することと、「新政府という概念も役目を終えたのではないかとも感じてます」と記し(https://twitter.com/zhtsss/status/323744609496875008)、新政府の終了を示唆したが、その後も新政府初代内閣総理大臣として活躍している。

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補足情報

参考文献

『独立国家のつくりかた』,坂口恭平,講談社,2012
『本』2012年6月号,「独立国家のつくりかた」,坂口恭平,講談社,2012