新東京都庁舎コンペ
- Competition of the Tokyo Metropolitan Government Buildings
- 更新日
- 2024年03月11日
1985年から86年にかけて、現在の東京都庁舎の設計者選定のために実施された指名コンペティション。敷地は新宿西口の都有地3ブロックで、延べ床面積は約34万平方メートル、総工費(予算)は1,365億円に及ぶ当時戦後日本最大と言われたコンペである。コンペに参加したのは、丹下健三都市建築設計研究所、日建設計東京本社、日本設計事務所、前川國男建築設計事務所、坂倉建築研究所東京事務所、山下設計、松田平田坂本設計事務所、安井建築設計事務所東京事務所、磯崎新アトリエの9社で、東京都新都庁舎設計競技審査会が審査を行ない、丹下健三都市建築設計研究所の案が1等に選定された。その後、91年に現在の東京都庁舎が竣工した。丹下案はノートルダム聖堂にも似たツインタワー形式で、ファサードには花崗岩による縦長の格子状のパターンを採用し、強いシンボル性と装飾性を併せ持った案となっている。審査会では、そうした過剰な装飾性が自治体の施設としてふさわしくないとする声もあったが、最終的に丹下案支持が多数を占めた。一方、丹下とは師弟関係にある磯崎新が提出したのは、参加者のなかで唯一の中層案であり、建ぺい率がオーバーしていることなど法規面の問題から当選案からは外れたものの、安易な超高層化を拒むひとつの見識として幾度も議論の俎上に上ったという。この案の1辺24メートルのキューブをベースとした4棟の本庁舎に囲まれ、ミラノのガレリアのように内部化された大広間は、光と闇が交錯する崇高な空間を目指したもので、デザインの要となっている。
補足情報
参考文献
『磯崎新の「都庁」戦後最大のコンペ』,平松剛,文藝春秋,2008
『丹下健三』,丹下健三、藤森照信,新建築社,2002
『建築設計競技 コンペティションの系譜と展望』,近江榮,鹿島出版会,1986
『UNBUILT/反建築史』,磯崎新,TOTO出版,2001