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ジオスコープ

Geoscope
更新日
2024年03月11日

構造家、建築家、デザイナーのB・フラーが構想した球体の情報端末ディスプレイ。フラーの著作『エデュケーション・オートメーション』(1962)や『クリティカル・パス』(1981)において紹介された。ジオスコープは直径200フィート(約61メートル)の球体形の、コンピュータに接続されたミニチュア版の地球で、古今東西の情報をまとめたデータベースを用いて地球全体を視覚化する教育的環境として構想された。ジオスコープにより(ダイマクション地図と同様に)地球の生命活動に関するあらゆるパターンを視覚化して情報全体を俯瞰的に一挙に把握することができるようになり、戦争、気候、資源問題などの複雑な問題の解決が目指された。「ダイマクション計画」や「ジオデシック・ドーム」の実現など、建築、構造、デザインの実作や提案を通じてフラーは科学と技術の適正利用により人類全体が幸せになる道筋を思い浮かべており、政治思想とは無縁なライフサイエンスによる革命を夢見ていた。コンピュータ技術の発展と連動したジオスコープの先駆的な構想は、総合的な視点で地球について思考し、教育を含めた世界システムの再編成を主張するフラー思想の核心であり、ヴァーチュアル・アース3Dなど三次元地図サーヴィスがすでに実現、汎用化された21世紀にいたるまで思想的影響を与えている。

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補足情報

参考文献

『クリティカル・パス 人類の生存戦略と未来への選択』,バックミンスター・フラー(梶川泰司訳),白揚社,2007
『建築文化』1999年5月号所収,「バックミンスター・フラー ライフサイエンス、デザイン、そして建築」,暮沢剛巳,彰国社,1999
『バックミンスター・フラーの世界 21世紀エコロジー・デザインへの先駆』,ジェイ・ボールドウィン(梶川泰司訳),美術出版社,2001
Education Automation: Comprehensive Learning for Emergent Humanity,Richard Buckminster Fuller,Lars Muller Publishers,2009