人工土地
- Artificial Ground
- 更新日
- 2024年03月11日
人工的に作り出された土地およびその構想を指し、人工地盤とも呼ばれる。橋の上に建物が立ち並ぶイタリア・フィレンツェのポンテ・ベッキオから、バベルの塔のような空想的なものに至るまで、人工土地に類する事例は古くから散見されるが、近代的な都市計画的手法としてはル・コルビュジエの「300万人の現代都市」(1922)をもって嚆矢とされる。日本においては、東京湾を埋め立てて新たな首都を造るとした「加納構想」(1958)が発端となり、菊竹清訓の「海上都市」(1959)をはじめとするメタボリズムのメンバーによる各提案や丹下健三の「東京計画1960」(1961)など、人工土地に関する議論が活発化した。なかでも、メタボリズムのメンバーでもあった大高正人が手掛けた《坂出人工土地》(1968年第一期竣工)は、商業および住宅からなる複合的な再開発であり、日本における人工土地の最初の実例として各界から注目を集めた。その後も、大高と菊竹が関与した「層構造モジュール研究会」(通商産業省・機械振興協会)などを通じ検討が加えられていくが、その多くは構想レベルに留まり、数少ない実例のひとつである菊竹の《アクアポリス》(1975)も、その後スクラップとして海外に売却処分されるなど、建築家が思い描いた人工土地の多くは夢半ばで頓挫したと言わざるをえない。一方で、大高らが土地の所有関係にまで踏み込んで取り組んだ一連の人工土地に関する思考は、空き家や所有者不明の土地の問題など、今後の日本が抱えるであろう都市問題にも示唆するところが大きいと考える。
補足情報
参考文献
『都市と人工地盤 その意味と導入手法』,花輪恒,鹿島出版会,1985
『住宅』2001年2月号,「坂出人工土地」,井出建、梅澤豪太郎,日本住宅協会
『メタボリズム・ネクサス』,八束はじめ,オーム社,2011