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人体測定法

Anthropometric
更新日
2024年03月11日

人体の形態および機能を計測し、その測定値から個人間・集団間の比較を行なったり、人体の諸性質を数量的に明らかにする方法。生体計測と骨格計測の二種類の計測法がある。発生は19世紀後半。人類学の分野における人種の識別、優れた体格の者を選ぶ軍事的目的で発展したほか、医学的診断にも用いられた。1880年代にはパリ警察庁の職員A・ベルティヨンが、自分の名前や経歴を偽る容疑者・犯罪者を特定するため、膨大なデータの分類法として人体測定法を採用。ベルティヨン式と呼ばれたその方法はフランスだけでなく国外でも導入され、司法写真と合わせて犯罪捜査と身元確認に貢献した。今日、世界的に統一されている基準は、ドイツの人類学者R・マルチンが確立したマルチン式に拠るもの。そこでは専用の器具で計測点間の距離、周径、弧角、角度、比重などを測り、身体の諸特徴を客観的・科学的に表わすことが試みられる。人体測定法は家具や衣服の規格などデザインの分野と密接に関係を持つほか、人間工学や体育学の研究でも有効利用されるものである。

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参考文献

『19世紀フランス光と闇の空間 插絵入新聞「イリュストラシオン」にたどる』,小倉孝誠,人文書院,1996
『身体の歴史3』,アラン・コルバン、ジョルジュ・ヴィガレロ監修,ジャン=ジャック・クルティーヌ編(岑村傑監訳),藤原書店,2010
『指紋論 心霊主義から生体認証まで』,橋本一径,青土社,2010