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ストゥディウム/プンクトゥム

Studium/Punctum(仏)
更新日
2024年03月11日

ロラン・バルトが『明るい部屋』(1980)のなかで写真をめぐる経験として使用した対立概念。バルトによれば「ストゥディウム」は一般的、科学的関心を意味し、文化的にコード化された写真受容。それに対して「プンクトゥム」は一般的な概念の体系を揺さぶり、それを破壊しにやってくるものでコード化不可能な細部を発見してしまうような経験である。前者は「好き/嫌い」の次元に、後者は「愛する」の次元に属するという。バルトは『明るい部屋』以前から写真が「コードなきメッセージ」であることを主張し、写真の言表しがたい領域を「第三の意味」や「鈍い意味」、「意味の過剰」といった言葉で説明してきた。『明るい部屋』においても後半部は「プンクトゥム」の経験に分析の重点が置かれており、「温室の写真」と称される亡き母の少女時代の写真を介して、母と写真の本質が開示される。写真という記号を題材としながらも、読み取りのコードの陥没点が立ち現われる過程が、バルト個人を媒介者として記述されている。

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参考文献

『「明るい部屋」の秘密 ロラン・バルトと写真の彼方へ』,青弓社編集部,青弓社,2008
『写真の存在論 ロラン・バルト「明るい部屋」の思想』,荒金直人,慶應義塾大学出版会,2009
『第三の意味 映像と演劇と音楽と』,ロラン・バルト(沢崎浩平訳),みずず書房,1984
『明るい部屋 写真についての覚書』 ,ロラン・バルト(花輪光訳),みすず書房,1985