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セゾン美術館

Sezon Museum of Art
更新日
2024年03月11日

1975年、西武美術館として東京池袋に開館した私立美術館。89年に「セゾン美術館」に改称。西武百貨店池袋店内に位置し、創立者の堤清二の掲げた「時代の精神の根拠地」を理念として、主に20世紀の先鋭的な海外美術動向を扱う企画を開催した。建築、デザイン、写真などのジャンルの紹介に積極的であったことも特徴。美術館にはセゾン・グループの美術専門書店「アール・ヴィヴァン」(95年に閉店、97年にセゾン・グループを離れナディッフとして移転再開)が隣接し、美術館とともにハイカルチャーとしてのアートを普及した。また教育プログラムの開発に積極的で、公立学校の教員と共同で作成したボックス型貸し出し用教材ツール「あそびじゅつ」、子ども用のキャプションや子ども向け展覧会パンフレットを作成するなどの先駆的な試みでも特筆される。99年の閉館後は「セゾンアートプログラム」が芸術支援活動を引き継ぎ、画廊や廃校を使って同時代美術を紹介する年次展「アートイング」展の開催のほか、機関誌『SAP Journal』を10冊刊行。収集品は、堤康次郎のコレクションの保存・公開を目的に設立された高輪美術館(62年開館、81年に高輪から軽井沢に移転)を前身とするセゾン現代美術館(91年改称)に収蔵されている。バブル期前後の「セゾン・カルチャー」と呼ばれた文化潮流の一翼を担った施設であり、企業によるメセナ活動を代表する例でもある。

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補足情報

参考文献

『ヨーゼフ・ボイス よみがえる革命』,水戸芸術館現代美術センター編,フィルムアート社,2010
『セゾン文化は何を夢見た』,永江朗,朝日新聞出版,2010
「辻井喬と戦後日本の文化創造──セゾン文化は何を残したか」『談』No.90,たばこ総合研究センター,2011