「戦後日本の前衛美術」展
- “Japanese Art after 1945: Scream against the Sky”
- 更新日
- 2024年03月11日
1994年、インディペンデント・キュレーターだったアレクサンドラ・モンローを客員学芸員として横浜美術館が企画した展覧会。その後グッゲンハイム美術館、翌年にサンフランシスコ近代美術館へ巡回した。戦後美術の拠点となったアメリカに感化されたと言われる日本現代美術の独自性を示すこの展覧会は、86年にポンピドゥー・センターで開催された「前衛芸術の日本 1910-1970」展の流れを汲みながら、造形美術をクローズアップ、90年代までを網羅した。アメリカに巡回した年は戦後50年を迎え、奇しくもオウム真理教による事件や阪神・淡路大震災などのニュースが報道されたこともあり、アメリカ初の戦後日本をテーマとした展覧会は話題を呼んだ。
当展覧会は前衛美術家たち百数名の200点あまりの作品を展示するものだった。例えば、戦後初の前衛美術団体である具体の活動をはじめ、井上有一の書やイサム・ノグチによる陶芸作品、土方巽の舞踏、オノ・ヨーコらフルクサスの活動、コンセプチュアル・アート、もの派、草間彌生などの抽象絵画、久保田成子らヴィデオ・アートと、そして森村泰昌やヤノベケンジら同時代のアーティストの作品など、オリジナルや再制作された作品、ハプニングなどの記録映像を展示し、戦後50年間の日本美術がもつ独自の文化アイデンティティを再評価する展覧会となった。吉村治良の作品をカヴァーにしたカタログは、磯崎新、柄谷行人、ナム・ジュン・パイクらが執筆、巻末にはアーティストや批評家らの引用文と用語解説が収録されており、アメリカにおける日本の戦後美術研究の重要な文献のひとつとなっている。なお、キュレーターのモンローは草間彌生やオノ・ヨーコ、篠原有司男を紹介した現代アジア芸術研究の第一人者であり、現在はグッゲンハイム美術館、アジアン・アート部門シニア・キュレーターに就任している。
補足情報
参考文献
Japanese Art After 1945: Scream Against the Sky,Alexandra Munroe et al.,Harry N. Abrams,1994
「戦後日本の前衛美術」展カタログ,横浜美術館学芸部編,読売新聞社,1994