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超線形設計プロセス論(批判的工学主義)

The Super Linear Design Process Theory
更新日
2024年03月11日

日本の建築家・藤村龍至(1976-)が提唱する設計方法論。さまざまな制度が複雑にからみ合う都市環境のなかで、まず単純な形態を想定するところから始め、「ジャンプしない」「枝分かれしない」「後戻りしない」というルールのもと、細かな設計条件の一つひとつに個別に応えるかたちで案を修正し続け、最終的にあらゆる条件に見合った建築を抽出することが目指される。東京の集合住宅《BUILDING K》(2008)など、藤村はこの方法論を自作に適用している。その設計プロセスの各段階では、同一スケールの建築模型がつくられ、どこをどのように修正したのかが逐一保存される。設計プロセスの明快な序列化、および模型による修正点の記録は、通常、建築家の頭という「ブラックボックス」のなかで誕生する建築アイディアを、クライアントなどの他者にもわかりやすく共有可能なものとするうえで有効となる。また、この超線形設計プロセス論は、2007年に社会学者の南後由和(1979-)、建築家の柄沢祐輔(1976-)と藤村によって提唱された「批判的工学主義」の建築を実現するための手立てとしてある。1995年以後、建築が法規やコストによってなかば自動的に建設される「工学」的存在になるなか、都市における大規模プロジェクトはゼネコン/組織設計事務所が担う一方で、アートピースのように一品生産にこだわる反工学主義的な建築家は、そうした舞台に参加できない。批判的工学主義は、現代の都市環境において断絶したこの二組の設計主体を架橋するための、第三の態度である。

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補足情報

参考文献

『10+1』No.49,「『批判的工学主義』のミッションとは何ですか?1──定義・マニフェスト編」,藤村龍至,INAX出版,2007
『10+1』No.49,「『批判的工学主義』のミッションとは何ですか?2──『虚の不透明性』をめぐる空間概念編」,柄沢祐輔,INAX出版,2007
『10+1』No.49,「『批判的工学主義』のミッションとは何ですか?3──歴史・メディア編」,南後由和,INAX出版,2007
『JA 70 風景の解像力』,新建築社,2008
『1995年以後 次世代建築家の語る現代の都市と建築』,藤村龍至/TEAM ROUNDABOUT編著,エクスナレッジ,2009
『10+1』No.48,「超線形設計プロセス論──新たなコンテクスチュアリズムへ」,藤村龍至,INAX出版,2007
『設計の設計』,柄沢祐輔,田中浩也,藤村龍至