ディアスポラ
- Diaspora
- 更新日
- 2024年03月11日
ディアスポラとは「移民」「植民」を意味する思想用語。ギリシャ語のディア(分散する)とスピロ(種をまく)を語源とする。かつては主にユダヤ人・ギリシャ人・アルメニア人の歴史的離散に限定して使用されていたが、現在ではより広義に移民コミュニティ一般を指し示すようになった。1960年代後半まではそれぞれ異なった呼称を与えられていた離散コミュニティを、一括してディアスポラと呼び替える動きも生まれた。現在、民族としての出身国や地域を離れて生活を送る集団であれば、ディアスポラと呼ばれることが多い。こうした状況のなかでカルチュラル・スタディーズの研究者であるイエン・アングは、ディアスポラを「身体的には世界各地に分散しているにもかかわらず、共通のエスニック・アイデンティティによって少なくとも名目上は結びついている人々の編成形態」と説明した。彼らの多くが自分たちのアイデンティティの前提として、「故郷」に特別な執着を持っており、またそのことに自覚的でもある。「故郷」は世代を超えた記憶として代々語り継がれるが、時にまだ見ぬ想像上の、理想化された土地となっていることもある。このようなディアスポラの意識の保存・再喚起に、言説のみならず、アートや音楽が大きな影響を与えている。
補足情報
参考文献
『グローバリゼーションの文化政治』,「ディアスポラを解体する グローバル化時代のグローバルな華人性を問う」,イエン・アング,平凡社,2004
『グローバル・ディアスポラ』,ロビー・コーエン(駒井洋監訳、角谷多佳子訳),明石書店,2001