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デモンストレーション

Demonstoration
更新日
2024年03月11日

政治的・社会的な目的を達成するための示威行動。デモンストレーションは政治運動や社会運動にとっての主要な表現手段だが、アートと無縁であるわけではない。例えばアメリカ合衆国の場合、1980年代にはACT UPのようなエイズ・アクティヴィズムや、ゲリラ・ガールズのようなフェミニズムが盛んにデモンストレーションを繰り広げた。それらはマイノリティをめぐる表象の政治学についての異議申し立てであり、主として美術館制度を標的にしたものだった。デモンストレーションには、すぐれたデザインと具体的なデータを引用したポスターやプラカード、機関紙などが動員された。このような直接行動の起源は、おそらく69年にニューヨークで結成された芸術労働者連合(Art Workers’ Coalition)にある。これはアーティストが経済的な保証や作品の展示に関する権利をみずから美術館に要求する運動だった。カール・アンドレ、ロバート・モリス、フランク・ステラ、ロバート・スミッソン、ドナルド・ジャッド、ハンス・ハーケらは美術館や画廊での個展をみずから封鎖し、そこに抗議文を貼り付けた。また、AWCは当時盛んだったヴェトナム反戦運動にも参加した。とりわけAWCの名を広く知らしめたのが、AWCに加わっていたジョン・ヘンドリックスとジャン・トーシュによるゲリラ・アート・アクション・グループである。彼らは『LIFE』誌に掲載された「ミライの虐殺」の写真をもとにポスターを制作し、それらをニューヨーク近代美術館に展示されているピカソの《ゲルニカ》の前でゲリラ的に披露した。こうしたデモンストレーションがパフォーマンスやハプニングと異なるのは、それがある政治的社会的な目的を明確に伝達しようとしていることである。

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参考文献

『あいだ』33号,「美術館の『壁』を揺るがす アート労働者連盟の教訓と経験」,小倉利丸,「あいだ」の会,1998
『美術手帖』1970年9月号,「世界の動向」,美術出版社