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田園都市

Garden City Movement
更新日
2024年03月11日

1898年にイギリスの社会改良家エベネザー・ハワードが提唱した、都市と農村の融合を目指した都市計画。19世紀の産業革命により、ロンドンは人口集中と環境悪化を招いた。この状況を憂いたハワードは、アメリカのエドワード・ベラミーによるユートピア小説『顧みれば』にインスピレーションを得て、1898年に「都市と農村の結婚」というフレーズで有名な『明日 真の改革にいたる平和な道(To-morrow: A Peaceful Path to Real Reform)』を出版した。これにわずかな改訂を加え、1902年に再版されたのが『明日の田園都市(Garden City of To-morrow)』である。田園都市では、周囲を緑地帯で囲われた限られたスペースの中に3万人から5万人が居住し、住宅は公園などのパブリック・スペースに囲まれる。また、農作業スペースなどを持つ、自給自足の職住近接型の都市であり、中央の都市や他の田園都市とは鉄道と道路で結ばれる。実際に03年にはロンドン北部のレッチワースで初めての田園都市が事業化され成功を収めた。レッチワースでの田園都市の成功は、北米を中心に世界的に影響を与え、日本でも渋沢栄一らが田園都市株式会社を設立し、田園調布駅を中心とした田園都市の開発を行なったほか、阪急電鉄の小林一三は、千里山などいくつもの田園都市の開発に力を注いだ。

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補足情報

参考文献

『明日の田園都市』(SD選書),E・ハワード(長素連訳),鹿島出版会,1968
『「明日の田園都市」への誘い ハワードの構想に発したその歴史と未来』,東秀紀、風見正三、橘裕子、村上暁信,彰国社,2001
『田園都市を解く レッチワースの行財政に学ぶ』,菊池威,技報堂出版,2004
『都市田園計画の展望 「間にある都市」の思想』,トマス・ジーバーツ(簑原敬監訳),学芸出版社,2006
『顧りみれば』,エドワード・ベラミー(山本政喜訳),岩波文庫,1953