『日本プロレタリア美術史』岡本唐貴、松山文雄
- History of Proletarian Art movement in Japan, Toki Okamoto and Fumio Matsuyama
- 更新日
- 2024年03月11日
1920年代後半から日本プロレタリア美術家同盟が解散した34年までのプロレタリア美術運動を担った美術家の岡本唐貴と漫画家の松山文雄(別名:まつやま・ふみお)の編著による、同運動の回想と記録をまとめた本。1967年に造形社から出版された。内容は、25年の三科の解散による大正期新興美術運動の終焉から27年の「新ロシヤ美術展」の影響を経て同運動へ展開してゆく美術家たちの離合集散を綴る章、同運動に寄り添う漫画史をまとめた章、同運動の前史として『平民新聞』や黒耀会などを論じる章、グループ・造形の活動について述べた章などからなる。若き日の映画監督・黒澤明がプロレタリア美術研究所に通っていた頃に制作した油彩画など、労働者やデモを描いた作品が多数掲載されている。もっとも、同書の執筆には漫画家の松山も関わっているものの、全体的には同運動のなかでも絵画至上主義の一派であるグループ・造型および造型美術協会の視点でまとめられているという批判もある。だが、そもそも同運動は弾圧のためにほとんどの作品が失われているため、同書は失われた美術史を回復する役割を果たしたといえる。
補足情報
参考文献
『日本プロレタリア美術史』,岡本唐貴、松山文雄,造形社,1967
『日本の近代美術』,土方定一,岩波書店,2010
『日本近代美術論争史』,中村義一,求龍堂,1981