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「人間と物質」展

“10th Tokyo Biennale: Between man and matter”
更新日
2024年03月11日

第10回日本国際美術展(東京ビエンナーレ)。1970年5月から8月にかけて、東京都美術館を皮切りに京都市美術館、愛知県美術館、福岡市文化会館を巡回。ナショナリズムの競争舞台でもある国際展には当時、学生の反対運動で混乱した第34回ヴェネツィア・ビエンナーレ(1968)を契機に世界的な批判が高まっていた。これを背景に本展は開催年を本来の69年から1年延期し、企画構成のすべてをコミッショナー中原佑介に一任、国別参加制と受賞制度の廃止といった大幅な改革を断行した。中原は準備期間に視察したドイツの「態度が形になるとき」展やアメリカの「アンチ・イリュージョン」展といった同時代の動向を踏まえたうえで作家を選び、1-2作家に1部屋を与え、図録の構成も各作家に委ねるなど個人尊重の方式をとった。英タイトルが示す通り人間と物質の「関係」をテーマとした40作家による展示内容の大半は、もの派、アルテ・ポーヴェラ、コンセプチュアリズムの傾向で占められた。従来の「作品」観を裏切る素っ気ない様相は賛否の議論を呼び、赤字のため72年の国際展を休催する事態ともなったが、評価の定まっていない海外動向をいち早く紹介し、特にもの派の問題関心を明確化して国際的文脈に位置づけた展覧会として後年の評価が高い。国外作家の多くが来日して現場制作を行ない、その場に応じて作品を変化させるなど、美術館という場所や展覧会というメディアにも問いを投げかける実験性を帯びた展覧会でもあった。

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補足情報

参考文献

『人間と物質のあいだ:現代美術の状況』,中原佑介,田畑書店,1972
「第10回日本国際美術」展カタログ(2冊),毎日新聞社,1970
「東京府美術館の時代 1926-1970」展カタログ,東京都現代美術館,2005