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バイオフィードバック・ミュージック

Biofeedback Music
更新日
2024年03月11日

生体のフィードバック構造を利用する音楽。脳波や眼球運動など生体の生理現象を電気信号に変換し、その電気信号を音響化する、その音響が脳の中枢神経に知覚刺激として送り込まれて生体の生理現象が変化することで、フィードバック構造が形成される。結果的に生成される音響・音楽は、この構造を音響化したものとなる。この種のバイオフィードバック・ミュージックの最初期の作品に、A・ルシエ《独奏者のための音楽(Music for a Solo Performer)》(1965)がある。この作品では、演奏者の脳波からアルファ波を検知して電気信号を発生させる電子回路が用いられる。電気信号は音響を発生させ、演奏者の中枢神経に知覚刺激を与え、その結果、演奏者の発する脳波に影響を与える、というフィードバック構造が形成される。演奏者は脳波を制御して音響をコントロールすると同時に、脳波は音響に影響を受けるわけである。現代音楽史の文脈では、バイオフィードバック・ミュージックは「ライヴ・エレクトロニクス」の派生種として位置づけられる。「ライヴ・エレクトロニクス」は、スタジオを使わずに作曲と演奏を同一次元で達成する新しい「電子音楽」として登場した。バイオフィードバック・ミュージックはその派生種として、とくに日本では一柳慧が70年代に、輸入しようとしたものだった。生体のフィードバック構造を利用するこの音楽を、人間の内面を疑似科学的に探求した60年代後半という時代の徒花として考えることも可能である。この時代は、ティモシー・リアリー教授がLSDで人格変容の実験を行ない、さまざまなアーティストが東洋哲学を介して人間の本性について思考し、J・G・バラードらSFのニュー・ウェイヴたちが外宇宙(マクロコスモス)ではなく小宇宙(内なる自然としてのミクロコスモス)に関心を向けた時代だった。

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補足情報

参考資料

Biofeedback and the Arts: Results of Early Experiments,David Rosenboom ed.,NH: Frog Peak Music,1987
『SD スペースデザイン』110号,「バイオミュージックの音楽的背景」,一柳慧,1973