バンド・デシネ
- Bande Dessinée(仏)
- 更新日
- 2024年03月11日
フランスやベルギーを中心とした、フランス語圏でのコミックを指す。略してBD(ベデ)とも呼ばれる。BDはA4判のハードカバーが基本の版型で、すべてのページに彩色が施されているものが多く、スクリーントーンなどを用いず色彩のグラデーションで奥行きを表現したり、細部を丁寧に描き込むなど、しばしば西洋絵画や細密画からの影響を指摘される。一般的に日本のマンガは一コマで表現される時間の経過が短く、展開にスピード感があるのに対し、BDはセリフやナレーションが多く、一コマで表現される時間が比較的長い。作画、着彩に時間がかかるため、一冊のページ数も一タイトルの巻数も少ない。作品に合わせてセリフやナレーションのフォントが変えられていたり、一コマの絵の完成度が高いなど実験的・芸術的な作品が多く、本国ではコレクターズ・アイテムとして特に成人に人気がある。SFからユーモアまでジャンルは多岐にわたるが、『スマーフ』(ペヨ)や『タンタン冒険旅行』(エルジェ)のように登場人物がキャラクター化することは稀である。日本では、映画監督としても活躍するエンキ・ビラルや、映画『トロン』や『エイリアン』のデザインも担当しているメビウスなどが有名である。BDが「9番目の芸術」として親しまれているフランスでは、毎年冬にアングレーム市で大規模な国際BDフェスティヴァルが開催され、ヨーロッパ中からファンが詰めかける。日本のマンガ家谷口ジローは、このフェスティヴァルでいくつかの賞を受賞し、フランスで書き下ろしBDを出版、芸術文化勲章を受章した。また、2004年には宮崎駿とメビウスの展覧会がパリで行なわれ話題となった。このようにフランスのBDと日本のマンガは性質を異にするも、近年では互いに影響を与え合いながら成熟している。
補足情報
参考文献
『線が顔になるとき バンドデシネとグラフィックアート』,ティエリ・グルンステン,人文書院,2008