パパラッチ
- Paparazzi (伊)
- 更新日
- 2024年03月11日
芸能界、スポーツ界、ファッション界の著名人、王室関係者や皇族、事件性のある現場を被写体に、スキャンダラスなイメージを撮影するカメラマンのこと。写真はエージェントや雑誌編集部へ売り込まれ、媒体に掲載される。プライバシーを暴く厄介者として敬遠され、被写体と暴力沙汰の事件にいたるケースも多いが、被写体の側がメディア操作のためにパパラッチを利用することもある。パパラッチという言葉はイタリア語「Paparazzo」(パパラッツォ)の複数形。パパラッツォの語源には諸説あるが、映画監督のフェデリコ・フェリーニが、映画『甘い生活』(1960)に登場させた、マルチェロ・マストロヤンニ演じるフォト・ジャーナリストに対して用いられたのが始まりであるという説が有力である。ジャーナリスト役のモデルは、当時実際にローマで活動していたカメラマン、タツィオ・セッキアローリ。パパラッチの提供するスキャンダルは、その時代ごとの大衆の欲望に対応しており、時代や社会を映し出す鏡であると言えるが、そもそも1950年代にセッキアローリのような写真家の数がふえた背景にも、戦後のファシズム脱却後のイタリア映画産業の盛り上がりと、それに伴うアメリカ映画のイタリア・ロケの増加という社会情勢があり、パパラッチの存在そのものが、時代の変遷とともに育まれ、変容してきたとも言えるだろう。故ダイアナ妃の死亡事故に際してのパパラッチ批判や、肖像権保護法の成立による影響など、そのあり方は変化しつづけているが、機材の発達による取材方法や送付方法の変化も著しく、現在はデジタル技術を駆使しての活動が行なわれている。また、カメラ機能つき携帯電話の普及による一般人のパパラッチ化や、インターネット上への情報拡散も社会問題化している。
補足情報
参考文献
『ジャーナリズムとしてのパパラッチ イタリア人の正義感』,内田洋子,光文社新書,2005
『露出過多』(東京都写真美術館叢書),「階級闘争-パパラッチの発明 写真とダイアナの死」,キャロル・スクワイアズ,淡交社,2001