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美人画

Bijin-ga
更新日
2024年03月11日

近代以降の日本画において、人物像のなかでも特に美しい女性を描く絵画のジャンル。広義には女性像を描いた東洋絵画を含む。「美人画」とは江戸時代以前にはない言葉だったが、明治期に美術の制度が生まれ、ジャンル分けが進むなかで成立したと考えられている。礼拝の対象としての女性の肖像自体は太古から存在するが、江戸期の風俗図や浮世絵の《見返り美人図》に代表される美人図の意識が受け継がれ、明治期に文展・帝展のなかで、日本画における一ジャンルとして成立するようになった。代表的な画家に、清澄な女性像を描く鏑木清方と上村松園が挙げられる。ほのかなエロティシズムを描く画家として、伊藤深水、島成園、北野恒富も知られる。さらに妖艶な女性像を描いた甲斐庄楠音や岡本神草もいる。一般に、洋画における女性像、特にヌードは美人画には含まれない。また春画のように明白な猥褻性も美人画にはほとんど存在しない。美人画は一見わかりやすく大衆的な人気を最も惹きつけるジャンルではあるが、美術という近代の制度、性やジェンダーなど、決して単純ではない複雑な問題群を抱えている。

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参考文献

『日本美人画一千年史』,安村敏信,人類文化社,2002
「美人画の誕生」展カタログ,山種美術館,1997