フィギュラティヴ
- Figurative
- 更新日
- 2024年03月11日
対象を作品化するとき、具象的な表現をとること。もとは絵画や彫刻において、鑑賞者が見慣れたモチーフにおけるコンテクストや歴史などを思い起こしたり、制作者が主題を視覚化し、かつ的確に具体的な形象として再現することを指す。視覚的側面の具象化である「フィギュラティヴ」に対し、具体的な対象を単純な要素に還元した抽象や、無意識や精神世界を表わした非形象などを「ノンフィギュラティヴ(Non-figurative)」と呼ぶこともある。1950年代にアメリカ西海岸のサンフランシスコ・ベイ・エリアで生まれた「ベイ・エリア・フィギュラティヴ・アート」は、フィギュラティヴ・アートにリージョナルな側面が備わった活動として注目を浴びた。80年代以降のアートシーンでは、「フィギュラティヴ」は、絵画や彫刻にとどまらない広いジャンルで使われる言葉となった。例えばジャンルを超えた表現を行なう西野達の作品では、身の周りにあるものを用いて空間を変えていき、ときには視覚以外の感覚も揺り動かす表現をすることで、鑑賞者の記憶を想起させたり、問題提起を行なっている。このように「フィギュラティヴ」は、写真・映像やインスタレーション、パフォーマンスなど表現形態が多様化していくうえで、視覚的側面だけで語られるものではなくなり、意味も使い方も複雑化しているといえる。
補足情報
参考文献
「戦後日本美術の展開 抽象表現の多様化」展カタログ,東京国立近代美術館,1973