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へタウマ

Heta-uma
更新日
2024年03月11日

「一見(一聴)すると下手そうだが、よく見る(聴く)と下手さが計算されており、真似しようとしてもできなかったり、下手さが個性や味となっている」という意味の用語。イラストレーターでマンガ家の湯村輝彦が1980年代前半から使い始め、当時の日本イラストレーション界を席巻した。おもにイラストレーションやマンガ、楽器演奏において使われるが、下手さをテクニック不足ととるか、計算や個性・味と捉えるかは受け手の感性にもよるため、明確な定義はない。湯村が80年に刊行した糸井重里原作の『情熱のペンギンごはん』がヘタウママンガの金字塔となり、ブームの先駆けとなった。ほかには『金魂巻』で一世を風靡し、ヘタウマの開祖と呼ばれる渡辺和博をはじめ、蛭子能収、根本敬、みうらじゅん、しりあがり寿などがこのジャンルに入る。なかでも、しりあがりは横浜美術館での展覧会「日本×画展 しょく発する6人」(2006)や広島現代美術館での個展「オヤジの世界」(2007)でインスタレーションを発表するなど、美術の領域にも活動の幅を広げている。これは、本来は物語の挿絵や説明書の図解など、印刷物の文字情報を補助するための図版であったイラストレーションが、ヘタウマという表現の多様性を獲得したことにより、美術との境界が曖昧になってきたことを示す現象ともいえよう。

補足情報

参考文献

『金魂巻』,渡辺和博、タラコプロダクション,ちくま文庫,1988
『ヘタうま略画 図案辞典』,テリー・ジョンスン,誠文堂新光社,1986
『情熱のペンギンごはん』,湯村輝彦、糸井重里,情報センター出版局,1980