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香港ピーク

Hong Kong Peak
更新日
2024年03月11日

1983年3月に行なわれた国際建築コンペの通称。香港のヴィクトリア・ピークの山頂を敷地とする住居付き高級クラブの提案を求めた。審査員は建築家のジョン・アンドリュース、ガブリエル・フォルモサ、磯崎新、アルフレッド・シウおよびロナルド・プーンであった。コンペは47カ国から539作品の応募が集まり、結果として当時無名であったザハ・ハディドが1等に選出され、建築界に大きな衝撃を与えた。彼女は奇抜な色を用い、浮遊する無数の破片が散らばるようなスピード感のある斬新な表現のドローイングを提出した。またプログラムの構成においても、下層をアパート、上層をペントハウスとし、間にジムやバーなどが入るクラブのプラットフォームを浮かべ、それらが互いにスロープによって繋がり、交錯するという実験的な提案を行なった。こうしたデザインは、ロシア構成主義やシュプレマティスムの影響を受けたものとみなされている。彼女は一度落選しかけていたが、磯崎が拾い上げたことで最優秀賞を獲得するに至った。同時期に、パリの《ラ・ヴィレット公園》のコンペにおいてベルナール・チュミが1等に輝いたが、双方のコンペに磯崎が審査員として加わり、新たな建築のフェーズへと切り替わる重要な橋渡し役をした。「香港ピーク」のプロジェクトは事業者の倒産により実現されなかったが、その後、彼女はチュミとともに、MoMAの「デコンストラクティヴィスト・アーキテクチャー」展(1988)で紹介された。しばらく実作はなかったが、93年に《ヴィトラ社消防ステーション》が建ち、現在は世界各地でプロジェクトを抱え、2004年にはプリツカー賞を受賞している。

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補足情報

参考文献

『イメージゲーム 異文化との遭遇』,磯崎新,鹿島出版会,1990
『a+u』1983年6月号,エー・アンド・ユー
『現代建築家99』,多木浩二、飯島洋一、五十嵐太郎,新書館,2010
『GA ドキュメント・エクストラ 03 Zaha Hadid(GA DOCUMENT EXTRA)』,エーディーエー・エディタ・トーキョー,1995
『建築文化』1983年6月号,彰国社