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ポストもの派

Post Mono-ha
更新日
2024年03月11日

美術評論家の峯村敏明が1979年にイタリアの『Domus』誌掲載の小論で提唱し、多摩美術大学と西武美術館の共催企画「もの派とポストもの派の展開 1969年以降の日本の美術」展(峯村敏明監修、1987)で前面に押し出された一群の作家たちの総称。山中信夫、北辻良央、田窪恭治、諏訪直樹、戸谷成雄、海老塚耕一、川俣正、岡崎乾二郎、吉澤美香、平林薫、加茂博、深井隆、矢野美智子、遠藤利克、黒川弘毅、前本彰子、堀浩哉、彦坂尚嘉ら、主に70年代末から80年代初頭に頭角を現わした作家で構成され(ただし堀、彦坂の2名は展覧会には不参加)、その一部は80年代の「ニューウェーブ」と重なる。ポスト印象派を意識した命名と展覧会の副題に明確な通り、「もの派の作品がなかったなら、あり得なかったであろう作品群」(東野芳明)として、もの派を批判的に継承し、日本固有の文脈を形成する意図の下に提唱された。作品の現われは多様で、もの派のように統一的な共通性は見えづらいものの、もの派と比較すると女性作家の参入、色彩の再来、絵画・彫刻といった伝統的技術の肯定などに特徴があり、とりわけその技術を反復、転写、借用といったメタ表現に活用する手法で通呈している。この点で超少女、絵画の復権など同時代の動向、さらには90年代のシミュレーショニズムにもリンクする運動と見ることもできよう。

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参考文献

「もの派とポストもの派の展開:1969年以降の日本の美術」展カタログ,多摩美術大学,1987