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ポリティカル・アート

Political Art
更新日
2024年03月11日

狭義の政治が関与した芸術傾向、社会を現状批判的に表現した作品、あるいは社会改善が制作動機にある芸術などに対して広範囲に用いられる。社会主義リアリズムなど体制維持の手段として機能した芸術に対して使用されることもあるが、20世紀前半であれば、新即物主義、K・コルヴィッツ、メキシコ壁画、ピカソの《ゲルニカ》など美学的意義を与えられた芸術が対象となる場合もある。20世紀後半においては、社会変革における芸術の力を信じたJ・ボイスやオノ・ヨーコの作品が代表作として示されたり、ポリティカル・コレクトネス(H・ハーケ、V・バーギンら)やフェミニズム・アート(J・シカゴ、S・レイシーら)と呼ばれた美術傾向が顕著な例として挙げられることもある。20世紀の終盤以降は脱政治的感性が好まれる傾向にあったが、深刻性を増す世界情勢により今世紀に入ってからは政治と関係を結ぶ芸術への関心が再び取り戻された。特に9.11の直後は多くの芸術家が事件に反応した作品を制作し、翌年に開催されたドクメンタ11でも、話題となったアトラス・グループ、R・ペティボン、T・ヒルシュホーンらの出展作をはじめとしてさまざまな次元で「ポリティカル」と評される作品が大半を占めた。その傾向はイラク戦争時に頂点に達したが、それ以降も関心が失われたわけではない。2011年の東日本大震災の直後に見られた作品としては、津波によって失われた東北の松の木を世界に取り戻そうというI・ギュンターのプロジェクト《Thanks a million》などがある。

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補足情報

参考文献

Art & Agenda: Political Art and Activism,Robert Klanten et al. ed.,Die Gestalten Verlag,2011
Kunstforum(Die Documenta11),Bd.161 August-Oktober,Selbstv.
『美術手帖』2002年8月号,特集=ドクメンタ11速報,美術出版社
『美術手帖』2003年6月号,特集=21世紀の戦争と美術,美術出版社