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町屋

Machiya
更新日
2024年03月11日

近世に確立された都市の住居形式のひとつ。商業地において商人、職人などが商いをしながら住む独立住宅であり、多くが群として建てられた。外観には紅殻格子(べんがらこうし)、犬矢来(いぬやらい)、虫籠窓(むしこまど)といった特徴的な要素が見られる。平安時代中期には原型となる建物が現われ出し、江戸時代の中頃には現在に引き継がれる型が完成したと言われている。現存する最古の遺構は、奈良県五條市の《栗山家住宅》(1607-)である。多くは間口3間から4間、奥行が20間ほどの「うなぎの寝床」と呼ばれる短冊形の敷地に、軒を連ねて建てられている。内部は通り庭(通し土間)と呼ばれる細長い土間が表から裏口まで続いており、手前側は店舗の接客や職人の作業スペース、奥は居住スペースとして使われていた。江戸時代に建てられた町屋は板葺または石置屋根であり、規模は平屋か、厨子二階(ずしにかい)と呼ばれる階高が低い二階を納屋として持つものであった。これは大名行列の際に二階から見下ろす行為が失礼にあたり、二階建てが禁止されていた影響である。その後、明治時代には二階建てや三階建ても建てられるようになった。
近世の住居形式として、城下町を中心とする多くの都市中心部に存在していたが、高度経済成長期に大都市においてオフィスが建ち並び、職と住の分離が進んでいく中で姿を消していった。しかし1975年に文化財保護法が改正され、伝統的建造物群保存地区制度が始まると、地方の町屋の中には観光資源として保存・活用されるようになったものも少なくない。近年では町屋を取り壊さずに修繕することで住宅や宿泊施設、飲食施設などとして再利用する動きが見られている。

補足情報

参考文献

『町屋と町並み』,伊藤毅,山川出版社,2007
『町家再生の創意と工夫』,京町家作事組編,学芸出版社,2005
『歴史的遺産の保存・活用とまちづくり』,大河直躬、三舩康道編著,学芸出版社,2006