ムンダネウム
- Mundaneum
- 更新日
- 2024年03月11日
国際団体連合(UAI。ブリュッセルに本部を置く非営利の国際研究機関)の秘書官であるポール・オトレはジュネーヴに世界文化センター「ムンダネウム」の設立を構想した。それは学際的な交流拠点として計画され、1929年、ル・コルビュジエに設計が依頼された。これに対してル・コルビュジエは、ジュネーヴの町を見下ろすグラン・サコネックスの斜面地にユートピア都市を計画し、その中に世界美術館、世界大学、世界図書館、国際会議場などを黄金分割に基づいて配置する都市計画案を提出する。計画の中心であり、最も高い場所に位置する世界美術館はジッグラトのような形状を持つ。内部には螺旋状の動線が配置され、来訪者はいったんエレベーターで最上階まで昇り、地上階へと向かって階段を降りながら鑑賞するという形式である。この螺旋状の空間構成は「無限発展の美術館」と名付けられ、その後もル・コルビュジエはこのモデルを、形状をキューブ型にしたり、ピロティを用いたりしながら他の都市計画などでもくり返し提案し続けた。ムンダネウム計画は最終的に実現に至らなかったが、このときに生まれた「無限発展の美術館」というプロトタイプは、《チャンディガール美術館》(1952)、《アーメダバード美術館》(1956)、《国立西洋美術館》(1959)などにおいて実現された。
補足情報
参考文献
『ル・コルビュジエ 近代建築を広報した男』,暮沢剛巳,朝日新聞出版,2009
『ル・コルビュジエ 建築・家具・人間・旅の全記録』,大菅力,株式会社エクスナレッジ,2002
『ムンダネウム』,ル・コルビュジェ、ポール・オトレ(山名善之、桑田光平訳),筑摩書房,2009