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『モダン・アート』長谷川三郎

Modern Art, Saburo Hasegawa
更新日
2024年03月11日

画家の長谷川三郎が、モダン・アートの歴史と現在の日本におけるその課題について、一般向けに平易に書いた本。1950年6月、東京堂から出版された。本書では、子どもの絵の魅力から説き起こし、上手・下手は問題ではないことを訴え、埴輪や土偶の気味の悪さの内に「生命の感じ」を認め、印象主義からシュルレアリスムまでの西洋近代美術史を解説する。そして最後に「明日の芸術」として、東洋と西洋を越えた美術、日本の伝統の内にあるシュルレアリスム的なものについて論じ、日本の伝統を生かしたモダン・アートの創造を訴える。本書の校正中の同年5月2日にイサム・ノグチが来日し、長谷川はノグチの内に、本書で試みた解説と予想以上に近い、しばしばまったく同じ考え方があることを確かめたと述べた。その後、一般向けの同種の美術書として岡本太郎の『今日の芸術』(1954)と『日本の伝統』(1956)が刊行され、ベストセラーとなった。しかし、確かにアジテーションとしての力強さは岡本に劣るにせよ、長谷川が論じたことの先駆性は注目に値する。

著者

補足情報

参考文献

『モダン・アート』,長谷川三郎,東京堂,1950
『今日の芸術』,岡本太郎,講談社文庫,1973
『日本の伝統』,岡本太郎,講談社現代新書,1973