Artwords®

ユーザーエクスペリエンス

User Experience
更新日
2024年03月11日

ユーザーエクスペリエンス(UX)は、さまざまな製品やサービスなどのシステムを利用する際における、ユーザーの体験に関するすべての事項を指す言葉として使用されている。このUXという概念は現在、研究・実践の分野を問わずさまざまな定義のもとで使用されており、その状況については、2010年に世界中のUX専門家による議論がまとめられた「User Experience White Paper」に詳しく紹介されている。UXが対象としている「ユーザーの体験」は広く、システムそのものの認知に始まり、使用時の心地よさ、使用後の満足感や所有すること自体の喜びなど、使用プロセスのすべての段階におけるユーザー自身の経験、およびそれによって起こる感情の変化を指している。また、現在の製品・サービス開発においては、このような体験に伴うユーザーの感情変化をどのように設計するかが重要なデザインの対象となっており、UXデザインというデザイン領域が生まれている。UXは、Webサービスの分野などで言及されることが多い用語であるが、かつて米国スターバックスコーヒーが、店舗のあり方を家でも職場でもない「Third place」と呼び、コーヒーの購入体験や、店舗で過ごす場所や時間を含めた体験すべてがもたらす価値の提供について、企業理念に明記するといった事例もあるように、さまざまな分野に適用可能な概念である。また、UXと併記されるかたちで使用される機会が多く、混同されることが多い言葉にユーザーインターフェース(UI)やユーザビリティというキーワードがあるが、UIは画面上のボタンやアイコン、物理的なスイッチなどをはじめとした、ユーザーが直接情報に触れる接点(インターフェース)そのものを指している。ユーザビリティはJIS Z 8521:1999(ISO 9241-11:1998)において「ある製品が、指定された利用者によって、指定された利用の状況下で、指定された目的を達成するために用いられる際の、有効さ、効率および利用者の満足度の度合い」と定義されており、どちらもUXとは異なる概念の用語である。

著者

補足情報

参考文献

『誰のためのデザイン?[増補・改訂版] 認知科学者のデザイン原論』,D・A・ノーマン(岡本明ほか訳),新曜社,2015
『エモーショナル・デザイン 微笑を誘うモノたちのために』,ドナルド・A・ノーマン,新曜社,2004
『JIS Z 8521:1999 人間工学─視覚表示装置を用いるオフィス作業─使用性についての手引』,日本規格協会,1999