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リアリズム写真運動

Realism Shashin Undo
更新日
2024年03月11日

1950年代に写真家の土門拳が提唱した「リアリズム写真」と、それに賛同したアマチュア写真家たちによって展開された写真運動のこと。土門は50年から写真雑誌『カメラ』で月例(アマチュア写真家向けコンテスト)の審査員を務め、熱のこもった指導を展開。戦後社会の現実に即したモチーフを被写体とする、リアリズムに則った写真を撮るべきであるとした。土門のこうした考え方は、戦前から続くサロン写真に対するアンチテーゼであると同時に、戦時下に参加した、対外宣伝のための報道写真制作に対する反省にも起因していたと考えられる。具体的にどのような写真がリアリズム写真であるかについての土門の発言には、時期によって微妙な変化が見られ、「カメラとモチーフの直結」や「絶対非演出の絶対スナップ」などの、方法論として挙げられたキーワードも、明確には定義されていない。そうしたなかでアマチュアたちの写真は、路上生活者など特定のモチーフを扱ったスナップショットへと定型化し、「乞食写真」と批判されるようになっていく。やがて土門は55年に「第1期リアリズム」の終焉を宣言し、テーマ性を確立した「第2期リアリズム」へ進むべきであると主張。自らも『ヒロシマ』(1958)や『筑豊の子どもたち』(1960)といった、実作によるリアリズムの実践へと向かうことになる。土門はのちに、この運動は一部のアマチュアを組織しただけで終わってしまったと回想しているが、土門月例の応募者からは、金井清一、目島計一、杵島隆、臼井薫、田中一郎、川田喜久治、福島菊次郎、東松照明、深瀬昌久など多くの写真家が育っており、その功績は大きい。

補足情報

参考文献

『写真作法』,土門拳,ダヴィッド社,1976
『日本現代写真史 1945-1970』,「第1期リアリズム写真運動」,伊藤知巳,平凡社,1977
『土門拳の格闘』,岡井耀毅,成甲書房,2005