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陸軍美術協会

Rikugun Bijutsu Kyokai
更新日
2024年03月11日

太平洋戦争中に陸軍の外郭団体として発足した美術団体。1939年4月、大日本陸軍従軍画家協会に所属する美術家が200人を超えたのを機に同会が発展解消するかたちで組織された。会長は陸軍大将松井石根、副会長は藤島武二で、43年の藤島の没後は藤田嗣治が後任となった。活動目標は、陸軍情報部の指導のもと、美術に関するすべての問題に即応し、作戦目的遂行に協力することと定められた。展覧会の開催は数多く、「聖戦美術展」(1939、41)、「大東亜戦争美術展」(1942、43)、「陸軍美術展」(1943-45)、「国民総力決戦美術展」(1943)、ほかに南方での従軍取材を披露する展覧会(1942、2回)がある。また、展覧会に伴い、数多くの出版物を発行したが、なかでも当時としては豪華な図録、絵はがき、冊子、従軍画家による文集、そして靖国神社の春と秋の大祭時に編集された、戦争遺族向けのカラーの画帖『靖国之絵巻』(1939-44)が知られる。その絵巻には、藤田、宮本三郎、中村研一、鶴田吾郎ら洋画家による戦争画を挿絵風に描いたもの、横山大観、鏑木清方、川合玉堂などによる日本画家による国威発揚のための清澄な挿絵が掲載された。展覧会と出版の両面から戦争画の制作と普及の実態を担っていた組織であったといえる。

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参考文献

『昭和期美術展覧会出品目録 戦前篇』,東京文化財研究所編,中央公論美術出版社,2006
『戦争と美術 1937-1945』,針生一郎監修,国書刊行会,2007