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レディ・メイド

Ready Made(英), Ready-made(仏)
更新日
2024年03月11日

マルセル・デュシャンによって考案された作品概念。大量生産された既製品からその機能を剥奪し「オブジェ」として陳列したものをいう。本来「既製品」を意味する語であるが、デュシャンはそれを自身の「作品」のカテゴリカルな名称として位置づけた。1913年に台所用のスツールの座面に自転車の車輪をマウントした「レディ・メイドの手を借りた」作品が制作されたが、《ボトル・ラック》(1914)や《泉》(1917)などは13年の作品の構成的原理を離れた「単体」として提示された。表象的作用や意味の排除、芸術生産の一回性=手仕事の否定、「現実」性、制度的空間との共依存的関係、芸術と非芸術との接近など、レディ・メイドが近現代美術の領域で切り拓いた芸術的指標は膨大である。レディ・メイドに関しては、「選ぶ」という行為が芸術家によるほぼ唯一の作品への関与として挙げられるが、デュシャンはレディ・メイドを作家の美学が反映されたシュルレアリスムの「ファウンド・オブジェ(見出されたオブジェ)」とは異なり、「徹底した趣味の欠如」ないし「視覚的な無関心」によるものであると定義した。つまりレディ・メイドとは、人称性や作品への美学的判断の介入をも切断する、特殊な態度を要請するものであったといえる。

著者

補足情報

参考文献

「マルセル・デュシャンと20世紀美術 MIRRORICAL RETURNS」展カタログ,国立国際美術館,横浜美術館,朝日新聞社事業本部大阪企画事業部編