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1%法案

Percent Program
更新日
2024年03月11日

主に公共建築を建設する場合に、総工費の1%前後を芸術的・文化的用途に用いることを定めた制度の総称。フランス語の「1% artistique」、あるいは英語の「Percent for Art」を翻訳した概念。具体的には、美術作品の購入、モニュメントの設置、庭園・植栽・遊歩道の整備をはじめ、建築全体に芸術的要素を加えたり、建設プロジェクトにコミュニティの人々が参加するためのプログラムの設定などにかかる費用にも適用される。1%法案の起源は、世界恐慌後の1930年代のアメリカで展開されたニューディール政策の下、公共事業促進局が連邦芸術事業計画に基づき、芸術家を雇用して公共建築に壁画を描かせたことに見出すことができる(ただし、アメリカでの制度化は63年と遅い)。その後、学校建築への建設予算の1%を限度とする芸術的装飾の導入を定めた省令として、49年にフランスで初めて法令化され、以降、欧米を中心に波及していった。芸術家への公的支援から始まった制度だが、建築と美術の協働によってよりよい都市空間をつくり、市民が日常的に美術に触れる機会を増やそうという理念から拡大していき、パプリック・アートの台頭やコミッションワークの普及にも影響を及ぼした。日本では、78年に神奈川県が「文化のための1%システム」に取り組んだのを皮切りに、80年代にかけて全国の自治体で導入された。しかし、欧米のように法令化されることはなく、自治体独自の文化行政のなかで期間や事業に限定して行なわれたため継続性に乏しく、現在ではほとんど立ち消えの状態にある。

補足情報

参考文献

『パブリックアート政策 芸術の公共性とアメリカ文化政策の変遷』,工藤安代,勁草書房,2008
『文化経済学』第6巻第3号(通巻26号),「文化の1%システムの日本における展開」,柴田葵,文化経済学会,2009