バックナンバー
2009年09月15日号のバックナンバー
フォーカス
アイ・ウェイウェイに映る中国
[2009年09月15日号(今村創平)]
昨年の四川大地震では、多くの命が失われた。とりわけ未熟な建築技術によってつくられた学校が多数倒壊したため、たくさんの子どもたちが犠牲になった。アイ・ウェイウェイは、彼のブログを通じて、亡くなった子どもたちの名簿の作成を始める。多くの情報が寄せられ、リストは着実に長くなる。しかしその記録はしばらくしてネット上から削除された。彼はこの災害に関連して裁判での証言を予定していたが、当日、妨害をもくろむ当局によって拉致・監禁され、出廷はかなわなかった。被災地では子どもたちのランドセルが散乱していたことを知り、ウェイウェイはランドセルをつなげて、大きな竜をつくることを思いつく。ランドセルの緑、黒、白のいろどりは、つなげられるとまるで生き物の節のように見える。その竜は、森美術館の展示室の天井近くでとぐろを巻いている。
キュレーターズノート
木村友紀「POSTERIORITY」/少年少女科学クラブ「理科室の音楽、音楽室の理科 TUNE/LABORATORIUM」/館勝生 展
[2009年09月15日号(中井康之)]
天候不順な冷夏とはいっても、やはり夏は暑く、この時期は毎年の事とはいえ美術の話題も若干少なくなる気がする。月ごとの展評を担当していた時などは、夏期休廊を羨ましくも恨めしく思っていたかもしれない……。
広島アートプロジェクト2009「いざ、船内探険! 吉宝丸」展
[2009年09月15日号(角奈緒子)]
秋の足音が聞こえ始めた広島で、吉島地区を舞台としたアートプロジェクトが始まった。この「広島アートプロジェクト」は、広島市立大学で教鞭を執る柳幸典の指揮のもと、学生たちが主体となり現代アートの展覧会、レクチャーやイベントを企画、運営し、今年で3年目を迎える。テーマや趣向は毎年異なり、今回のコンセプトは宝船やお宝といった縁起物のようだ。
アート・アーカイブ探求
高橋由一《鮭》──吊るされた近代「北澤憲昭」
アートプロジェクト探訪
大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ2009──10年を経て、どこへ向かうか
[2009年09月15日号(白坂由里)]
2009年3月にレポートした「大地の芸術祭」。今年で4回目となる「<大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ2009」(2009年7月26日〜9月13日)は、前回の約35万人を上回る鑑賞者を動員し、大盛況のうちに幕を閉じた。高速道路料金の値下げや大河ドラマ「天地人」効果なども手伝ってGWから観光客でにぎわい、6月には女性誌2誌で「大地の芸術祭」が表紙を飾るなど「アートの旅」という切り口が客層の広がりをもたらした。2006年には地域固有の魅力創出や国内外の交流など、新しい旅の提案としても評価されて「第2回JTB交流文化賞」を受賞し、今回はパックツアーやシャトルバスも強化されていた。1日最高入場者数は、少ない地域でも100人を超え、田島征三《鉢&田島征三 絵本と木の実の美術館》やクリスチャン・ボルタンスキー+ジャン・カルマン《最後の教室》では1作品で1,000人をゆうに超えた。
〈歴史〉の未来
第2回:MAD動画化される世界
[2009年09月15日号(濱野智史)]
筆者は前回、「七色のニコニコ動画」という作品を取り上げ、次のように説明した。「N次創作」が盛んに行なわれるニコニコ動画という環境下において、それは「さまざまな作品を『ネットワーク』のようにハブとして繋ぎ、それらを極度なまでに圧縮した『データベース』と化すことで、かつての人気作品に対する追憶的な『コミュニケーション』を喚起する場としての役割も果たしている」と。はたして本作品のこのようなあり方は、本稿のテーマである「歴史の未来」についてどのような示唆を与えてくれるのだろうか。