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2016年04月15日号のバックナンバー
フォーカス
キセキノセイイ──「MOTアニュアル2016 キセイノセイキ」展レビュー
[2016年04月15日号(福住廉)]
東京都現代美術館で「MOTアニュアル2016 キセイノセイキ」が開催されている(5月29日まで)。昨今、美術界の内外で話題を集めている「表現規制」に焦点を当てた展覧会で、アーティストによる自主的な組織「ARTISTS’ GUILD(アーティスツ・ギルド)」と同館との協働企画である。「MOTアニュアル」は1999年より継続してきた同館恒例の企画展だが、とりわけ近年はテーマが軽佻浮薄であるばかりか、紹介される若いアーティストたちの大半はコマーシャル・ギャラリーの強い意向を伺わせる面々で、その脆弱な企画力に失望させられることが多かった。だが本展は、アクチュアリティのあるテーマを導入しながら問題含みの展示を構成している点で、その賛否はともかく、少なくとも議論の対象にはなりうるだろう。
キュレーターズノート
大竹伸朗「針工場」/淀川テクニック「ゴミニケーションin熊本!!」「だまし絵王エッシャーの挑戦状」
[2016年04月15日号(坂本顕子)]
瀬戸内国際芸術祭2016の目玉のひとつである、大竹伸朗の最新作「針工場(はりこうば)」を見るために、香川県の豊島に向かった。訪問日はあいにくの雨。フェリー内のテレビからは、高松商業の56年ぶりの甲子園優勝をかけた熱戦の様子を伝えるニュースが聞こえてくる。
山口啓介 | カナリア
トピックス
戦争にまつわるアートシーン──2015年度を振り返る
[2016年04月15日号(artscape編集部)]
2015年度は全国の美術館やギャラリーで戦後70年に関する企画が数多く開催されました。2015年1月15日号から2016年3月15日号に掲載された記事のなかから、戦争に関する作品や展覧会のレビューやレポートなどをピックアップしました。
藤田嗣治をはじめとする戦争画への注目、日本と他のアジアの国との関係をあらたにとらえなおそうとする個人的な視点、安全保障法制や沖縄の米軍基地問題、民主主義のあり方をめぐる社会的議論の影響など、戦後70年とそこからつながる現代社会へのさまざまな応答がうかがえます。
デジタルアーカイブスタディ
日本の美術館にアーカイブズは可能か? シンポジウム「日本の戦後美術資料の収集・公開・活用を考える」
[2016年04月15日号(谷口英理)]
2016年3月20日、国立新美術館で、シンポジウム「日本の戦後美術資料の収集・公開・活用を考える〜大阪新美術館建設準備室所蔵『具体美術協会』関係資料を中心に〜」が開催された(大阪新美術館建設準備室・国立新美術館・文化庁主催)。本シンポジウムの目的は、大阪新美術館建設準備室が所蔵する「具体美術協会」関係資料(以下、「具体」関係資料)の事例を契機として、同様のアーカイブズ資料を日本の美術館が収集・公開・活用していくために必要な条件や課題を整理し、特に美術館関係者と共有することにあった。登壇者は美術資料と深い関わりを持ってきた(元)美術館職員ばかりだが、アーカイブズに関しては全員が門外漢の立場にある。日本の美術館では、学芸員や美術図書室の司書が別の業務の合間にアーカイブズの整理を担当している場合が少なくない。アーカイブズの問題を取り上げるシンポジウムにあえてアーカイブズの素人集団で臨んだ理由は、そのような日本の現状から出発することで、現場に寄り添ったリアリティのある議論にしたかったためだ。